Wednesday, 6 November 2013

前口上から、はここまで

さて、ラジオ。

高校野球福島予選準決勝。郡山の球場で、昨日の雨をうけての再試合と。
あ、やっぱり昨日はかなり雨降ったんだ。
で、今日も局地的な大雨が予想されると。
まあ局地的つうてんだから、そこにぶちあたらないことを期待しよう。
んでは出かけますかね。

まだ来てないか、待ち合わせにはちょっと早いしな。
ま、何週間かぶりの休みをわざわざとってもらって悪いんだけど。
しかし暑いね福島。

んーでも昨日のお店の人。
避難所や仮設住宅でこれから必要になる物資のことをかなり詳しく話てくれたけど、こっちから話をふらなかったらそんな話たぶん自分からはしなかったよな。
みんな個々で当たり前に自分が出来ることをやってるんだろうな。

あ、来た



「で、4時過ぎくらいに郡山にいたいんだよな」
「できればね」
「つうわけでだ、福島市の西にさ、磐梯吾妻スカイラインつう紅葉がきれいな、まあ夏もこれからだけど、そういう有料道路があるんだけど今無料開放されてるんだ、そこ通って猪苗代湖に行って、ぐるっとまわって郡山に行けばちょうどいい時間になると思うんだ。米沢とかも考えたけど反対方向だからさ」
「んじゃ、それで」



「でもさ、最初に原発の事故を知った時はどう思ったの?」
「それどころじゃなかったよ」
「ん?」 
「だってさ、ライフラインが全部駄目で食べるものもないんだよ。今日明日を生きることで精一杯だったから原発の事故を気にする余裕なんてなかったよ。あくまで俺の場合は、だけどね。そーいえばさ、地震の時お前はどうだったの?東京も地震すごかったんでしょ?」
 

 
「ま、こっちと比べりゃとは思うけど、無茶苦茶怖かったよ。さすがにあんな揺れは体験したことなかったし。あ、そうだ、その直前なんだけどね、俺がすんでるアパート、外に共同の洗濯機とランドリーがあるのね。ちょうどその時洗濯しててさ、両手ふさがってめんどくさいから扉のロックをわざと出して、半開きじゃないけど引っ掛ける状態にしてたのね。足とかで開けられるように」

「そしたらいきなり何処からかドリルで穴開けてるような振動音がし始めてさ、最初どこで音が鳴っているのかわからなかったんだ。で、これ、この扉が鳴っているんだ、と、気づいたけど、もちろん何で鳴っているのかもわからなくて、で、しばらくするとその鳴りもおさまったからさ、不思議だなと思いつつも、まあいいかと扉をしめて、そしたらしばらくすると揺れがはじまって、まあそのうちおさまるだろうと思ったけど、おさまらないどころか、どんどん揺れがひどくなっちゃって、あわてて外に出たらもう周りの建物があきらかに揺れてるしさ、コレハヤバイと声にだしていっちゃったよ」

「で、その夜が、川越街道も凄い渋滞、歩行者の列もとぎれない、レンタカー屋も長蛇の列でさ。後で聞いたら、20~30キロ歩いて帰ってきたってザラみたい」




「あんまり車走ってないな、無料なのにな」
「まあ平日だしね」
「でもここは観光地なんだよ。でだな、ここをもう少しいくと、つばくろ谷という、紅葉が非常に美しい、まあ夏もこれからだけど」
「それもあるんじゃない?」
「まあシーズンではないな。で、んな風光明媚な場所があるからさ、ちょっとそこに寄ろうよ」
 


「おお、すげー、つうか、こえー、この谷どんくらいあんの?バンジーできそ、百メートルくらい?もっと?つうか、目測ってなにげにあんまりあてにならんよね、んー確かに紅葉の時に来たらさらによさそー、でもさーああいうとこにあんなデカイ橋架けるんだから凄いよねー。ちょい橋から下の写真撮ってくるー」

「なに橋の上をあっちこっちとフラフラ徘徊してんだよ、あらぬ誤解を受けるんじゃないかと心配したじゃないか。まあ、物凄いへっぴり腰で手だけ伸ばして下の写真撮ってる姿見て、ああ、大丈夫だと思ったけどな。で、撮れたの?」
「うん、欄干がばっちし」


 
  




 
 
 
「でさ、この道ちょうどのぼりきったあたりに浄土平という、あ、ここらあたり熊でるから」
「え!熊出んの?」
「普通に出るよ。で、浄土平という場所があってだな、そこは火山性のガスが発生してるせいで樹木が生きていけないんだ」
「ほー」
「結構幻想的な風景だよ。そこにレストランあるからさ、そこで飯食おうよ」

「ホントだ、危険!火山性ガス発生!みたいな看板もたくさんあるし、風景一変、荒涼としてきたな」
「うん、ここで窓あけるとガスで危険だよ。で、もうちょいで着くから」
「何か見るトコあるの?」
「吾妻小富士つうて、富士山のミニチュアみたいな山に登れるよ」



「この駐車場も無料か、ホントにどこも無料なんだな。それなりに車はとまってる、ん、やっぱり福島ナンバーが多いか?つうても県外もちらほら、まあ、どこも割合的にはこんなもんかな?でも、このスカイラインが現在無料とか県外の人に知られているのかね?」
「どうだろう、で、どうする?」
「とりあえず登ろうよ、あれだよね」
 


「こうして見ると隕石でも落下したみたいだけど、これってもともと火口なんだよね?」
「だろ、よく知らないけど。あっちの山はまだ噴煙あげてるし」
「でも昔の人の浄土のイメージってこんなんなのかな?浄土って極楽だよね?ここはどちらかと言えば賽の河原のような」
「このあたりだけじゃないからさ。湿原があったり、五色沼って不思議な沼があったり、浄土平は自然豊でね。あとはまあ、ここから見る紅葉がホントにきれい。まあまだ夏もこれからだけどだ」
 
「秋にもう一度来い、と(笑)」
 
「ところで何でそんなへっぴり腰で写真撮ってんの?もっと近づいて撮れば?」
「いや、落ちたら」
「大丈夫、落ちねえよ」
「いや、わからん」
「つうか落ちたってそのへんにひっかかるって」
「いや、ひっかからんかったらどうする」
 
「これふちにそってぐるっと一周できるけど、どうする?」
「いや、飯食おう」

 
  





 
 
「何でかしらんが、いつもここにくるとソースカツ丼食べちゃうんだよ」
「ほーじゃあ俺もそれにするか、でも今んとこ雨降らんでよかったね」
「何か降りそうではあるんだけどね、後はここ反対方向に下っていけば猪苗代に出るから」
 
「しかし昨日から考えると福島ってデカイよね、九州なら何県突き抜けてるんだか、てな距離走ってるよ。まあ九州の上の方の話だけど。ところで猪苗代って、会津とかにも行けるのかな?」
「4時前後に郡山にいたいんだよね?会津はちょっと遠いな」
「遠いかい?」
「うん、でもこないだ会津遊びに行ったんだけどさ、まあ閑散として閑古鳥鳴いてたわ。観光客いなかったよ。会津は放射能関係ないんだけどね。少なくとも関東とかとたいしてかわらないよ」
 
「放射線量の高低てさ、山とかも関係するのかな?」
「んーどうだろう、関係ないことはないだろうけど、やっぱり風と雨じゃないかな。水素爆発の時に大気中にばらまかれた放射能が風で運ばれて、雨で地面に落ちて、低いところに水たまりとしてたまって、それを土が吸収してしまったってのがほとんどじゃないかな。じゃ、行くかい」




「あ、猿」
「え、猿?」
「ほら、猿」
「ほんとだ猿」
「ん、あそこにも猿」
「あれ?あれも猿?うわ、猿。猿。猿。すげーいる。顔赤」
「え、でもなんで猿」
「猿だから猿だろ」
「いや、何でこんなところに猿?」
「だってここ熊でるんでしょ?猿がでてもおかしくは」
「熊はでるよ、でも猿がでるなんて聞いたことないよ」
「熊の方がでられても困ると思うけど」
「大丈夫だよ、よっぽど腹減ってないと人間なんて襲わないよ。しかし猿がこんなところにいるか?」
「あれじゃない?車の交通量が減って猿が進出してきたとか」
「いや、そもそもここ猿がいるには標高高すぎだろ。上に行くにしたがって餌少なくなるんだからさ」
「ほーなるほど」



「もう少し行けば猪苗代湖見えてくるから」
「あれ?今止まってたパトカー石川県警って書いてあったような?」
「ああ、応援で来てくれてるんだよ。震災直後はもっと多かったけど、今でも原発の避難区域の警備で県内の警察は人手不足なんじゃないのかな」

 
「しかし、福島はどこに行っても田園風景だね」
「米どころだからね、みんな夜明け前から大切に育ててるんだ。お、ほら、目の前、あれ猪苗代湖だよ。で、会津はあの山の向こう」
「また山越えるのか、やっぱり福島はでかいな」
「ちょっと猪苗代湖畔を走るか?」
「ぐるっと一周とか」
「できねえよ、猪苗代湖でけえぞ」 
 
 


 
 
 
 
「このへんヘビでるから、って、ヘビじゃねえか」
「うわマジだ、おいおい」
「あとマムシもでるから気をつけろ。でも水は温かいな、これ泳げるよ」
「何か遠浅な感じでよさげだね」
「いや、いきなりストンと深くなったりするんで、指定された場所以外で泳ぐのは結構危険だよ。あ、ヒグラシ鳴いてんな」
「これヒグラシって言うんだ?」
「うん、秋のセミなんだけど、このへんは涼しいからね」
「ふーん、東京はさ、7月も終わろうつうのにセミ鳴いてないんだよね、蚊もあんまいない。しかし、いいとこだね、福島」
  

 
「いいとこだよ。でもね、やっぱり考えるよ、もう一度原発で爆発があったらどうしようって。俺は福島好きだからさ、ここで頑張る、放射能なんかに負けねえって、そう思うけどさ」

「でも、もし、また、あの水素爆発みたいなことがあったらさ、それでもそう言えるのか、やっぱり考えるよ。もちろんわかるよ、そのおかげで現在こんなに快適で豊かな生活ができてるって。それはわかる」

「だから俺はさ、あの福島の原発を世界遺産に登録してほしいよ(笑)豊かで便利な生活を追求した結果、人間はこんなことをやらかしちゃいましたって、世界遺産に登録して永遠に後世に残してさ。だってこんなこと一度で十分すぎるだろ。そこは肝に銘じた上でさ、快適で豊かな生活を追求してほしいよ」

「さて、もうちょい時間あるな。ここに来る途中に野口英世記念館てのがあったじゃん、ちょいあそこによろうよ。それでいい時間だよ」




え?これ野口英世の生家?
移築とか再現とかでなくここがそうなの?
んで、あれが、かの有名な囲炉裏?
ほー、いやね、ま、そんなにね、野口英世のイメージてもともとないんだけどね。
もっと、なんつうかね、雪深い山奥の小さな家を想像してたんだけどね。
まさか猪苗代湖畔のこんな開放的な場所にあるなんてね。
まあ、もちろん、来た時の季節とか天候とか時代によってイメージなんて変わるもんなんだろうけどね。
しかし、ずいぶん明るい感じがするところじゃないか。
しかも思ったよりも家でかいし。
ん、ここに書いてあるか?
この家屋はだいたい二百年前の江戸時代につくられた、ほー。
でも、これが、当時のこのあたりの農家の一般的な大きさなのかな?
あれかな?柱とか梁とか太いけど、 

「なあ、このくらいの大きさの家じゃないと冬の積雪にたえられないのかな?」
「どうだろう?でも、俺らが今越えてきた山の向こうの福島市とかはそうでもないけど、このあたりは確かに雪結構積もるよ」

「え?福島の中だけでも気候ってそんなに違うの?」
「かなり違うよ、福島市なんてたいして雪つもんないよ。でもこのへんは豪雪地帯じゃないかな?だからこのへんの民家って雪が屋根の上に積もらないように三角形、すごい急勾配になってんだよ」
「そうなんだ」
「車で走ってれば普通に見れるよ」

「でも、この野口さん紹介のビデオ、随分と、これから、ってところで終わらない?」
「ここから成し遂げた業績は展示室で観てくれってことじゃない?」
 
 
このボタンを押すと身振り手振りでいろいろ説明してくれる、妙にリアルでちょっと怖い野口英世ロボット。

「なあ、ここ押すと、野口さん何か毎回違う人生のアドバイスをくれるらしいぞ」
「マジですか。んでは早速ポチッとなと」
「ありがとうございました、肝に銘じます(笑)」
 
(内容はすっかり忘れました、一切肝に銘じていません) 
 
「んで、どうする、そこでラーメンでも食う?」
「まだ入らんよ」
「んじゃ、郡山に向かうか?今から向かえばちょうど4時前後に着くんじゃないかな」
「そうしよう、でも結局雨降らんでよかったよね」


 
「ここが郡山開成山公園。ここに野球場もあるんだよね?」
「あるよ、何で?」
「いや、朝のラジオでここで甲子園の予選の準決勝がおこなわれてるって、まあ、もう試合終ってるだろうけど、でも二日間どうもありがとう」
「おう、気をつけて」
「そっちも事故るなよ、またね」


わ、雨むちゃ降ってる。な、快速な帰り道でした。

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